iPadのペイントアプリ「Procreate」にバージョン5.2がリリースされています。3Dモデルをキャンバスにしてペイントできる機能や、ブラシの新しい手ぶれ補正、M1 iPad Proモデルでのレイヤー数の大幅な上限アップなどワクワクする新機能が多く含まれています。不具合もいくつか見つかっていますが、修正版の5.2.1が出ていますのでぜひ導入してProcreateの新しい機能を体験しましょう!
最新バージョンの新機能を詳細に解説
今回もメジャーアップデートかと思うほどに面白い機能が複数追加されています。以下の項目について詳しく解説をしていきます。
- 読み込んだ3Dモデルのペイント
- ブラシに新しい手ぶれ補正設定を追加
- ブラシサイズの登録
- 6GB以上のメモリを搭載したiPadモデルでレイヤー上限をアップ
- ページアシスト機能でレイヤーごとの表示切り替えが可能に
- 調整でフィルターを加えるときの手順を変更
- カラーパレットに大きなスウォッチ表示とカラー名の登録機能
- iPadOSのDynamic Typeに対応
- フィードバックサウンド
- シングルタッチでのジェスチャー操作
動画でアップデート内容を確認したい方には、以下ディープブリザードさんの解説もおすすめです。
3Dモデルへのペイント機能
アクションメニューの中のヘルプから「新機能」をタップするとバージョン5.2のプロモーションページが開きます。
「モデルパック」と表示されたボタンをタップするとサンプルの3Dモデルをダウンロードできます。
データをダウンロードするとギャラリーに合計8個の3Dモデルが追加されました。
それぞれの3DモデルをキャンバスにしてApple Pencilを用いてペイントできます。3モデルの角度を変えながら、レイヤーを追加して描き重ねたり、フィルターを加えたり2Dのペイントと同じように自由に作業できます。
ブラシセットには3Dペイント向けに新しく「素材」セットが追加されており、立体感や素材の変化を作れるブラシが用意されています。とりあえず塗るのに使いやすい「アバロン」はかなりおすすめです。
使用するブラシの素材感の調整は「ブラシスタジオ」を開いて、新しく追加されている「素材」の項目で行います。「メタリック」「荒さ」の2つのパラメータの調整で、ギラギラした金属っぽい感じや硬い皮のような質感などを作り出せます。
「アクション」の中から「3D」を選択します。ここでは3Dモデルの設定を行うことができます。
「照明と環境を編集」では、3Dモデルを配置した空間の「照明」や「環境」を自在にコントロールできます。
「照明」ではブロック状の光源を配置して3Dモデルへの光の当たり方を変更できます。高原は複数配置して距離や角度を3次元的に操作できます。
「環境」では用意されているプリセットから選択して、想定するシーンでの見え方を手軽に確認しながら作業できます。
iPadのモデリングアプリを使って作成した素材を使いたい場合は、UVマップを追加できるアプリを用いる必要があります。
現時点では「Forger」や「Nomad Sculpt」がこの機能に対応(残念ながらNomad Sculptは未対応)しており、「Generate automatic UVs」でUVマップを追加したモデルを出力するとProcreateでも読み込めるようになります。詳しくは上の動画も参考に作業してみてください。
完成した作品は動画として出力すれば出来上がりをアニメーションとして鑑賞することができます。アクションの「共有」メニューから動画形式(アニメーションGIFやMP4など)を選択します。
「アニメーションの回転」では3Dモデルが横方向に回転し続けますが、「アニメーションのスイング」にすると回転の向きが左右に交互に切り替わります。
ブラシの新しい手ぶれ補正とモーションのフィルタリング
ブラシ関連では他に3つの新機能が追加されています。1つ目は新しい手ぶれ補正の設定です。ブラシスタジオを開くと「手ぶれ補正」という項目が追加されています。今までのストリームラインとは別に、描画速度に応じて補正される「手ぶれ補正」と速度に関わらずストローク全体に補正を加える「モーションのフィルタリング」が加わりました。
ブラシセット「インキング」には新しく「バスカビル」が追加されています。このブラシは手ぶれ補正がやや強く設定されており、クセはありますが新しい手ブレ補正の効果を確認できます。
以前までの「ストリームライン」を使った補正ではゆっくり描くときの効果は薄かったのですが、「モーションのフィルタリング」の「強度」を上げるとゆっくり描いてもストロークに強い補正が加わっていることを実感できます。
補正の効果としてはいずれも強度を上げれば直線に近づきますが、「モーションのフィルタリング」ではストロークの角まで丸く補正されやすい。細かな描写よりも滑らかで長いストロークに向いています。
一方で「手ぶれ補正」のほうは鋭く角を出すような線にも使えますが滑らかさは弱めになるようです。
ブラシサイズの登録と履歴
またサイドバーにあるブラシサイズと不透明度のスライダーに、チェックポイントを記録する機能も追加されています。ブラシのレビューウィンドウ右上にある「+」をタップするとそのサイズや不透明を登録できます。ブラシサイズと不透明どにそれぞれ最大4つまで登録できます。
登録したポイントを削除するときには、右上に表示される「ー」をタップしましょう。
前に使ったブラシはなんだったかな?と忘れてしまった経験ありますよね。
ブラシのライブラリに「最近の項目」が追加されており、最近使用したブラシのリストを見ることができます。またブラシを右から左へスワイプすることで星のマークが付いて「ピンで固定」できます。「ピンで固定」されたブラシは履歴が増えてきても消えることはありません。
また「検索」を選ぶとそのブラシが入っているブラシセットが開きます。どこに保存されていたブラシが思い出せないときに便利です。
ページアシスト機能とPDF読み込みの対応
PDFの書き出しに対応していましたがPDFの読み込みにも対応するようになりました。読み込んだPDFファイルは、1ページを1枚の画像を含むレイヤーとして読み込まれます。
Procreateの新しい使い方としてPDFへの註釈入れや、スケッチ帳、漫画のラフなど様々な用途で活用できる機能です。また「ページアシスト」を使用中は画面の下にページのサムネイルが表示されており、いつでもページを切り替えることができます。
「ページアシスト」のオンオフはアクションメニューの中の「キャンバス」の項目で選べます。またレイヤーのグループは1ページとして扱われるためレイヤーを重ねて描くことも可能です。
カラーパレットに大きめスウォッチの追加とカラー名の登録
カラーパレットのスウォッチリストの表示スタイルに、大きめの「カード」が追加されました。これまでのスタイルは「コンパクト」として残っており、上部のボタンで切り替えできます。
またスウォッチにはそれぞれカラー名の情報を追加され、自分で色名を考えなくてもアプリが自動で予測される色名を作成してくれます。「カード」スタイルのときに表示されているカード名のテキストをタップすると編集して好みのものに変更することもできます。
後述のアプリの「高度な設定」で「カラー説明を通知」をオンにすると、スポイトで取得した色の名称を通知バーに表示することができます。色を正確に選ぶたいときなどに便利な機能ですね。
「調整」のレイヤーとPencilの選択方法を変更
バージョン5.0から「調整」を加えるときに、レイヤー全体かブラシで描いた箇所のみ適用するか選択する機能ができました。しかし手順が増えてしまって操作が面倒なところもあったようで、このバージョンから操作が変更されています。
まず変更しなければ初めは「レイヤー」全体になります。その後で上部のバーをタップする(調整名〜% ▼のテキスト部分)と「レイヤー」か「Pencil」か選択するボタンが現れます。
以前は作業に入るまでに最低でも2タップ必要だったのですが、新方式では1タップですぐに編集画面入れるようになったということですね。そこからレイヤー全体か部分かを切り替えながら作業できるということでかなり便利になったと思います。
Dynamic Typeで最適な文字サイズに変更
Dynamic TypeはiPadOS全体で扱うテキストのサイズを変更する機能です。設定アプリで文字サイズを変更すると対応するアプリのツール内でも文字サイズが変化します。例えばiPad miniのような小さい画面では文字が読みにくいこともありますから、見やすい大きさに調整するといった目的で使います。
今回のバージョンからProcreateもこのDynamic Typeに対応したということになります。上の画像はiPad mini6でフォントサイズを変更した場合の比較です。大きさの変更には限界がありますが、ツールバーの幅やアイコンのサイズも変化していることがわかります。
設定アプリで「画面表示と明るさ」を選び「テキストサイズを変更」からサイズを変更すると連動してProcerate内のツールのフォントサイズが変化します。
しかしながら、場合によってはツールバーとマルチタスクボタンが重なってしまい操作に支障が出ることがあります。
iPad全体ではなくアプリごとにフォントサイズを変更したい場合は、設定アプリで「アクセシビリティ」→「Appごとの設定」から変更します。
「さらに大きな文字」でデフォルトより少し小さめにすることで、ツールバーとマルチタスクボタンの干渉を防ぐことができます。
レイヤー数の上限アップとメモリ使用率の変化
iPadOS15から6GB以上のメモリを搭載したモデルでは、アプリが使用できるメモリの制限(メモリキャップ)が見直されています。アプリ側で対応することでメモリを最大限まで利用できることになります。
試しにiPadOS15をインストールしたM1 iPad Pro1TBモデル(16GBメモリ)で、重めの作品ファイルを開いて変形ツールを使用してみました。上の画像のようにメモリ使用率を計測するアプリで見ると、内蔵メモリを多く消費していることがわかります。流石に動作はもたつきますがアプリが落ちるようなことはありませんでした。
レイヤー数の上限も上がっています。A4サイズの350dpiのキャンバスを作成した場合、「最大のレイヤー数」は154枚となりました。
ちなみにM1 iPad Pro(8GB)モデルでは84枚、iPad Pro 2020年モデル(6GB)では52枚が使用できます。
「高度な設定」から選べる機能
最後に「高度な設定」から開ける設定アプリ内の特殊な設定項目について。
アクションメニュー内の「ヘルプ」の中にある「高度な設定」をタップします。設定アプリから探す場合はスクロールしてProcreateの項目をタップします。
先に開設したように「カラー説明の通知」や「フィードバック音」など特別な設定が用意されています。「フィードバック音」ではレイヤーの操作や調整の決定時にピコンっと音がなります。
「シングルタッチジェスチャのコンパニオン」では上の画像のようにツールパネルが表示され、ワンタッチで各種操作をコントロールできます。マルチタッチ操作が使用できない、もしくはApple Pencilだけで操作したい人にも便利な機能となっています。
日本語翻訳された公式解説ページとTwitterサポート開始
Procreateを開発するSavage社は限られた人数で運営されている海外メーカーですので、今までは日本語のサポートにも限界がありました。しかしバージョン5.2にあわせて日本語の翻訳解説ページ(ヘルプからリンクをタップ)も公開され、Twitterの公式アカウントで日本語のサポートが始まっています。
以前よりも日本のユーザーの声も届きやすくなり、アプリの機能を詳しく知りたい人は公式ページを読んで勉強できるようになりました。
日本のユーザーが増えていけば使用環境も良くなっていくはずです。公式マニュアルとTwitterアカウントもぜひ活用してみてください。
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