iPadお絵かきアプリ「Procreate」でイラストを仕上げながら、描き方や機能を解説していきます。今回はパート3ということで、2018年現在の最新バージョン4.0で追加されたレイヤーマスク機能を使って描きます。
さらに、便利なデッサン人形(3Dポーズ)アプリ「マジックポーザー」で作った人物ポーズをラフに利用します。
使用環境はiOS11の10.5インチiPad ProとApple Pencilです。
デッサン人形アプリで手軽にポーズを作る
イラストを作る場合、通常なら鉛筆ブラシなどを使った下書きから入りますが、今回はデッサン人形アプリを使います。
デッサン人形アプリだけでラフに必要なこと全てを解決できるわけではありませんが、人物を描くときに手間がかかる部分、難しい部分を解決しやすくなります。
以下におすすめの3つのデッサン人形アプリをご紹介します。
「マジックポーザー」では関節が連動して動くため、自分でポーズを組むのも簡単です。さらにユーザーが投稿したポーズをダウンロードして活用するのも構図の勉強になります。
人物のほか立方体などの幾何形体、アクセサリーなども使用できます。
またこの記事作成中にリリースされた「イージーポーザー Easy Poser」は日本の漫画やイラスト向けのモデルが使えるため、そのままトレースする感覚で使用できます。
髪型やメガネなどをポーズに追加できる機能も役立ちます。
さらに「ArtPose Pro」というアプリは完全にリアルな筋肉を再現したデッサン人形アプリです。筋肉と骨格をしっかり把握したい人に向いています。
光源の色合いや表示方法、筋肉のつき方などをカスタマイズする機能があります。
デッサン人形アプリは作る絵柄に合わせて選択しよう
それぞれのデッサン人形アプリは、得意とするジャンルが違います。
「マジックポーザー」はリアル系モデルとややリアルな頭身の漫画・イラスト向けモデル、「イージーポーザー」は日本の漫画向けの少年少女モデルと言えます。
作りたいイラストのテイストに合わせて使い分けるといいでしょう。
Procreateにデッサン人形アプリの画像を読み込む
まず、「マジックポーザー」で構図や仕上がりのイメージを練ります。
今回はダウンロードしてきたポーズを使用。
ポーズは変えずに光の向きと視点を斜め上からに変えました。
画面上部にある共有ボタンをタップして、画面を画像としてアルバムに保存します。
「マジックポーザー」 では背景や光源を含めて出力するかどうか選択できます。
画像の保存形式をPNGにした場合のみ、背景を透明にできます。
画像が保存できたら、Procreateアプリを起動して2408×3508ピクセル、sRGB標準カラーモードでキャンバスを作成。
デッサン人形アプリから出力した画像をアクション(スパナのアイコン)の中にある「イメージ」 →「写真を挿入」 で読み込みます。
画像の下にレイヤーを追加してペン入れの準備
レイヤーを開いて、読み込んだ画像のレイヤーの右端「N」をタップします。
レイヤー設定ウィンドウが開くので、不透明度を20%にしてブレンドモードを「乗算」(表示がMに変わる)に指定します。
ペン入れをするレイヤーはその下に作成します。
下絵を一番上にするメリットについて
下絵にする画像を一番上に配置する理由は、塗り進めた後からでも光源や骨格を確認できるようにするためです。
下絵はペン入れの時以外にもチェックしたい場合があり、一番上なら塗ったレイヤーの上から重ねて表示できます。
鉛筆で描いたものを下絵にする際も、一番上にしておく方が後々比較しやすくなると思います。
ペン入れはオリジナルブラシで行う
ペン入れには自作の「主線鉛筆ブラシB」を使います。
筆圧が強いときにはベタッとした描けて、筆圧が弱い時には強く掠れるように工夫しています。アナログ感強めなブラシです。
以下のページで無料で配布していますので、ぜひダウンロードしてお試し下さい。
ペン入れの際には、ブラシ設定の「ストリームライン」を調整しながら、思い通りの線が引けるまで描き直します。
ストリームライン(手ぶれ補正)とは?
ストリームラインとはブラシごとに設定できる線の補正機能です。
スライダーの数値を増やすと手の揺れを補正してなめらかに描けるようになります。
小さな描き込みのときには数値を低めに、長くて整った線を描きたいとき(髪の毛など)には強めに設定するなど、描くものに応じて調整しながら利用するといいでしょう。
使用したデッサン人形モデルが自分の作りたいイラストのテイストと合っているため、体のラインはほぼそのままトレースしていきます。
服装はその上から重ねるイメージで加えます。
修正を加えながらペン入れが完成しました。
デッサン人形アプリの画像はここで非表示にして、線画のみ表示して仕上がりを確認しておきましょう。
ペン入れした線の色を正確に変更する方法
ペン入れした線の色を後から変更したいときには、クリッピングマスク機能を使うのが一般的ですが、あいにくProcreateには実装されていません。
その代わりとして「Alphaロック」を活用します。
主線の色を変更する方法
- レイヤーをタップして表示されるメニューで「Alphaロック」をタップ
- 「カラー」で変更したい色を選択
- 再びレイヤーメニューで「レイヤーを塗りつぶす」をタップ
似たような方法で線画を「選択」 →「レイヤー塗りつぶす」方法もありますが、これはおすすめしません。
レイヤーの「選択」 は選択ツール(上部のS字のリボンのアイコン)を使った場合と同じく、不透明度の選択範囲が正確ではありません。
不透明度を含む線画で「選択」 →「レイヤーを塗りつぶす」を行うと、上画像のように塗り残しができてしまい、線が荒れる(ジャギーが発生する)ことになります。
色面の塗りは塗り潰し+ブラシで調整
塗り作業に移ります。
まず全体的に下塗りを置いていきながら配色を決めていきます。
下塗りには塗り潰し(ColorDrop)ツールを使いますが、Procreateではカラーアイコン(右端の色を表示した丸)をドラッグして行います。
基準(リファレンス)レイヤーの設定などについては、以下の記事を参考にしてください。
Procreateは塗り潰し機能に特別な調整機能がないため、塗り残しが頻発します。
塗り潰しツールで塗り残した部分は、モノラインのストリームラインを「なし」に設定して、Apple Pencilでの筆圧に対応させたカスタムブラシでコツコツと塗っていきまます。
ブレンドモード「追加」で光の印象を加える
今回のイラストは寒い夜のイメージなので、全体的に暗めの色で配色しているため、影を付ける塗りは少なめにして光の当たる部分を初めに確認します。
レイヤーのブレンドモードを「追加」に変更して、白に近い色合いでざっくり塗ると光が当たったような雰囲気が出せます。
髪の毛など細かな描き分けが必要な部分ではレイヤーマスクを活用して調整していきます。
レイヤーマスクを使って塗りを調整
レイヤーマスクを使うメリットは多くありますが、重ねて塗るときにブラシのタッチを調整しながら残せるところです。
ここでは、光として入れたタッチを削りながら、衣服のシワを描き出します。
マフラーなど衣服の模様もレイヤーマスクを使いながら描いていきます。
レイヤーマスクの良さは、後から模様を少しずらしたり再編集できるところにもあります。
下塗りからのレイヤーマスク追加方法
下塗りを生かしてレイヤーマスクを追加する方法です。
- 下塗りレイヤーをタップ
- レイヤーメニューから「選択」
- 1つ上にレイヤーを新規作成
- 作成したレイヤーをタップ
- レイヤーメニューから「マスク」
追加したレイヤーマスクは黒色で塗った部分がマスクされ、白色もしくは消しゴムツールでマスクを消すことができます。
レイヤーマスクと範囲選択を使い分ける
範囲選択を使った塗り分けは、どちらかといえば影を付けるなときなどの、はみ出し防止が主な役目です。
一方でレイヤーマスクは、光の当たる範囲の調整や描き込みに使えるため、かなり利用範囲が広いです。
レイヤーマスクを多用するとレイヤー数が増えてしまい、すぐ最大レイヤー数の上限に達してしまうデメリットがあるため、要所要所で使っていくのがいいでしょう。
服の細部の質感を描き込む
最後に衣服の素材感を出すための描き込みをします。
書き込み用のブラシはパーツごとに変えますが、標準で入っている鉛筆やパステルなどのブラシを使っています。
マフラーにはフィルター「ノイズ」で粒状感を与えています。
キャンバスを切り抜いて構図を決める
最後に構図を最終調整するためにキャンバスの切り抜きを行います。
切り抜きに使う作品ファイルはオリジナルのデータを複製したものを使用しています。
切り抜いてさらに必要であれば解像度も変更。レイヤーを全て統合してから最後に「調整」でシャープを加えます。
イラストの完成
イラストが完成した時点ではレイヤー数は50枚ほどになっていました。
レイヤーマスクを多用すると本当にレイヤー上限にすぐ達してしまうので、注意が必要です。ここぞというところで使いましょう。
また、デッサン人形アプリを使うことで、ラフにかかる時間を減らして制作できたのは良かったですね。
逆にデッサン人形アプリから絵を創作するするのも楽しいです。
今後もデッサン人形アプリはどんどん便利になっていきそうな気がしますので、うまく自分の絵柄に合わせて活用していきたいと思います。
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▼イラストテクニック解説パート1とパート2もぜひご覧ください。
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